YUKI˚*
「……で、したの?」
学校に着くなり
あたしの席で待ち構えていたまなみんが口を開いた
したのっていうのは…
たぶん、キ…スのことだろう
「朝はまず"おはよう"でしょーが!」
「その調子だとまだだね」
う……
だって!!!
自分からしてって言うのも、するのも
「無理なもんは無理!!!」
そう言うと
まなみんは呆れたようにあたしを見た
……ヒドイ…
「わかった。ゆき、いい?今からあたしの言うことを聞いて」
そう言ったまなみんは
少し楽しそうだった
あれ?
「須嶋くん……」
「……え」
「……………」
「………何?」
キョトン、とした顔であたしを見つめる須嶋くん
…………うぅ
『いい?!ゆき!まずは名前を呼んで、相手をじっと見つめるの』
まなみんに言われて
それを実行したのですが……
ダメだったみたい
これ、めっちゃ恥ずかしいんだよ?!
須嶋くんは顔もすごいカッコいいから、見つめるのだって一苦労
心臓が破裂するかと思った
のに……わかってないのか…
なら、仕方ない
『それでもダメなら、もう、目を瞑る!これでわからないわけないでしょっ!』
こんなのもろ、キスしてって言ってるようなもんだけど…
恥ずかしさを我慢して!
あたしは須嶋くんのの服の袖をきゅっと掴んで
目をギュッと瞑った
本当はまなみんに、力を入れずに自然に閉じろって言われたんだけど
そんなの無理だ!
恥ずかしすぎて
顔も絶対赤い!
でもーー…
あ、ほら、
あたしの頬に大きな温かい手が触れる
やばい
本格的に心臓がドキドキしてきた!
あたしは意を決して
そのときを
待っていたーー
「ゆきちゃん、眠いの?」
ーーは?
目を開けると、須嶋くんが不思議そうにあたしの顔を覗き込んでいた
バッと顔をそらすあたし
うそうそうそ
わかってない?
もしかして須嶋くんって、超鈍感?!
「眠いなら、今日はもう帰ろうか」
そう言って須嶋くんは
あたしの気持ちなんかちっとも気づかないで
あたしの手を引いて
もう帰ろうとしてる
あたしは、須嶋くんの手から自分の手を振りほどいた
「もうっ!須嶋くんなんかしらない!」
そのまま
須嶋くんの顔も見ないで
あたしは須嶋くんに背を向けて帰ってしまった