YUKI˚*









それは



俺が9歳のときだった





目の前に広がる赤いもの


俺が理解するにはまだ早すぎて




だって俺はまだ



子供だった




でもそんなときも優はずっと


側にいてくれたよな





どれほど願って


祈っただろう




でも結局、どうにもならなかった



現実は

変わらなかった




9歳の誕生日だったんだ






それまで、家族ぐるみで仲が良かった優の家に引き取られた



優もその両親も、俺を本当の家族のように接してくれた





でも



俺はどこかで、やっぱり一人だった






どんなに良くしてもらっても



どんなにいい人達だとわかっていても





本当の家族でない



本当に心を開くことはできなかった






ただ



優とおじさんおばさんの


本当の家族の温かさを



側で見ているのが辛かった



思い出すんだ


俺にもあった、これに負けないぐらいの幸せなーー




辛くて



息苦しくて



羨ましくて




憎かった





きっとこの頃から


俺はもう黒く染まっていた






だから逃げたんだ





一人暮らしを始めてから



収まらないこの黒い気持ちを人にぶつけて


女を弄んで




だけど優、お前は


こんな俺を放っておかなかった




ごめんな



俺のせいで優まで黒くなってしまう




もういいんだ



お前はいいんだよ




こっちに来るな









優もいなくなってから


俺は本当に一人になって




前にもまして荒れていた



もう、真っ黒だった








そんなときに出会った








甘くて



真っ白な






あたたかい







雪の華












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