YUKI˚*








「久しぶりだな」




「おう」





「で、どーゆー風の吹きまわし?」



ひと気の無い廊下で、優は真顔でそう言った




なんで今さら学校来る気になったんだ、って



まぁ、言われると思ったけど





「何が?」




しらばっくれる





「………………」





優はそれ以上何も言わなかった


人が言いたがらないことは絶対聞かない



こいつのいいところだ



昔から






けど、今の優は少し違った




「女で遊ぶなよ。……白川も傷つけんな」





優はやっぱり真顔だ



俺があの女狙ってることも気づいてる


なんでもお見通しってわけね




「はは、大丈夫だって」



笑ってそう言った




このとき、優の言葉の意味なんか深く考えなかった




「そーいえば白川って下の名前なんてーの?」



優が知っているかなんてわからなかったけど



でも優は




知っていた



「……白川 ゆき……だけど?」




……ゆき




名前まで白なのかよ




はは、笑える




でも




合ってるな





「つーかお前、まだ変な奴らに絡まれてるのかよ」




優が俺の顔をじーっと見ながら言った




……あぁ、顔の傷ね




「遊んでやってんだよ」




「……程々にしねーとどうなっても知らねーぞ」




「お前だって昔は俺と…




「昔の話だ」




優は凛とした目で俺を見る



あぁ、もうあの頃とは違うんだな



よかったよ



優は



俺と同じようになっちゃいけない




これでよかったんだな



俺は優に




そうやって真っ直ぐ立って欲しかった





俺ももっと早く気付いていれば……




「はは、俺はもう手遅れだ」





そう言って笑うと、傷で顔が引きつって痛い




白川に無理やり貼られた花柄の絆創膏は剥がしてしまったから





「あ、もう授業だぜ?」



優が言うとちょうど予鈴が鳴った



「俺、屋上でサボっとくわ」



「…ったく、午後くらい来いよ」



「気が向いたらな」



「なんのめに学校来たんだよ」




優は呆れ顔でそう言いながら、ちゃんと教室に向かった



けど、足を止めて振り返る





「学校……来いよ、明日も」




変わったよ優は



けど



変わってない




「気が向いたらな!」









俺は一人、階段を登って屋上に向かう





なんか優、白川の話になると変だったような…



気のせいか



まぁ、いいや





あの女が来るまで




昼寝でもしとこーかな





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