YUKI˚*








止めどなく降り続ける雨は



これからあたしがある場所に行くのを、邪魔しようとしてるみたい





それでも傘を差して、あたしは歩き続ける



手には、濡れないように紙袋を抱えて





あるアパートの前で立ち止まった



屋根の下に入って傘を折りたたむと、階段を上ってある部屋を探す




「えーと104号室は、と……あった」



その部屋の玄関の前た立つ





ここが




「……須嶋くんの家…」









『行ったら見ることになるよ』



『……何を?』



『アイツの黒い部分を』







『………教えて』






あたしの顔を見て、川村くんは少し驚いた顔をして



『敵わないよ、白川には』



そう言った




どういう意味かはわからなかったけど、



川村くんは住所を教えてくれた






そしてここまで来ちゃったんだ



でも、あたしはまだ


インターホンを押せずにいた




『アイツの黒い部分を』



黒い部分……?



それは、須嶋くんが抱えてるモノのこと?


あたしに隠してること?



部屋に入れば、それがわかってしまうの……?





……ダメだ!


考えてもわからない


とりあえず中に入ってみないと




そう思って、あたしはそっと



インターホンを押した




「ピンポーン」



紙袋を持つ手にキュッと力が入る




「…………」





呼び出し音が鳴ったけど、須嶋くんの返事も、出てくる様子もなかった




出掛けてるのかな?





そう思ってドアノブに手をかけてみると



……開いた








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