YUKI˚*







須嶋くんは



足もすごい速いってこと忘れてた





「もう…どこ…行ったの……」



すぐに見失ってしまった




はぁ、とため息をつく





どうして


逃げるの……



さっきまでは怒りがあったけど今は



涙が出そうになって堪える





須嶋くん



あなたが





わからないよ………






必死で堪えていたのに、ダメだった



涙を隠すように



あたしはその場に座り込んだ





もう



……嫌だ







ガサッ




目の前に誰かが立った音がして



顔を上げる




「………………」




「………………」




「………なんで」



なんで来たの?


須嶋くんあなたは



逃げたくせに



どうして今来るの?



あたしは今泣いてる



泣いてるとこ、見られたくないよ




そう思っても、もう言葉は続かなくて



声は涙に呑まれる



自分の膝に顔を埋めて、もう止まらなかった



どうしてあたしは



須嶋くんのことになると、こんなに弱いんだろう




強くなりたいのに



須嶋くんを支えられるぐらい




強く、強く







「……ごめん」




黙っていた須嶋くんが、やっと声を出した




でも、その言葉の意図がわからない




何に対して、「ごめん」なの?




須嶋くんの表情から読み取ろうと、顔を上げた



あ、




須嶋くん


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