YUKI˚*








彼は、泣いてるあたしより




悲しい顔をしていた






「ごめん、俺………約束守れなかった」




最後の方はもう掠れて



やっと聞こえたような声




「合わせる顔がなくて…ごめん」





本当に、申し訳なさそうに



苦しそうなその声に




……うそ、でしょ?






だって、その「ごめん」は




ケンカをして「ごめん」ってこと?





あたしは



須嶋くんから「違うよ」って



「誤解だ」って



そう聞くとしか思ってなかったから





謝るってことは




もう、本当に




彼はあたしとの約束を破った




…ケンカ……したんだ





そして人を傷つけた





さっきの病院で見た




包帯でぐるぐる巻きにされた頭





あれも全部





須嶋くんがーーー










吐き気がする








「大学…行けなくなるかもしれないんだよ?」




顔を埋めたまま



あたしは泣き声でそう言った




須嶋くんは、あたしと一緒にいたいんじゃなかったの?





すると、




柔らかい、温かい何かに包まれて



耳元で、須嶋くんの声がした





「俺のこと、なめないで」



「……え?」



「俺、ちゃんと勉強して、もー誰にも文句言わせないよーにする」




胸が




熱くなる





「できるの?」



「できるよ」




須嶋くんは、はっきりと




「やる。ゆきちゃんと一緒にいるために」






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