YUKI˚*














ドキドキしながら教室のドアを開ける




そして




今日も須嶋くんはいないーーー





「ゆき!おはよー」



「おはよ」



「いよいよ寒くなってきたねー」



「…うん」





もう、朝から須嶋くんの話はしなくなった





そして川村くんも登校してくる




きっとまた朝から須嶋くん家に行って


ダメだったんだろうな



そんなことも、もう言わなくなった





だけど今日は




違った



「おい!白川!」



「ど…どーしたの?」



川村くんは朝からすごい形相で教室に入ってきた



一体何があったんだ




だけど、それを聞いて



「ケンが…いた」



あたしは、息ができなくなった




「いつもみたいに家に行ったらさ、開いてて…中に入ったら」



やけに川村くんの声がスローモーションに聞こえる




「ケンがいた」









それからの授業は全く頭に入らなかった



ただ外を眺めて



遠くを見つめて




もうあたしは



我慢できないと思った







放課後になってすぐ



あたしは鞄を持って教室を出た




行くところは



ひとつ






でも、校門の前まで行くと



まるであたしが来るのがわかってたみたいに



待ち構えてたみたいに



川村くんがいた




教室…あたしが一番に出たと思ってたのに、いつのまに…




「川村くん、どうしたの?」



無視して行くのもおかしいし、とりあえず声をかけた




でも川村くんは、いつもみたいな爽やかな笑顔を向けたりしない





「どこに行くの、白川」





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