恋愛小説
「由佳はおませなんだな。だから、こんなに早く婚約もしたんだね。」
コーヒーブレイクのとき、聡司が言った。
「そうかな。単に流れに流されただけのような気もするわ。」
あたしは、最近さっぱりつけなくなった婚約指輪の跡が少しのこっている左手の薬指をさりげなくみつめながら言った。
「そうなんだ?」
ちょっと不思議そうな顔をしたけれど、それ以上は何も突っ込んで聞かない。
聡司はそういう人だ。
あたしから、何の情報も引き出そうとしない。
自分の情報も出さない。
もちろん、単にそういう関係にすぎないからというのもあると思うけれど、
もともと聡司はそういう性格なのだと思う。

優也は違う。よく話す人。私が思わず笑ってしまうような面白い話をいつも用意しているかのよう。ある意味では、サービス精神旺盛と言ってもいいかもしれない。

どちらがいいとか悪いとかの問題ではなく、いろんな性格の人がいるんだと思わされる。
あたしは、まだ知らなくてはいけないことがたくさんあるんだ、きっと。
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