彼氏と彼女の抱く絶対的な秘密。
『……なんで、亜優は、アユミに…なったの?』
「えーと、えっと、…それは……」
『…………女装趣味?』
「違う!!!」
真っ向否定された。
「ゆっ、友紀だってなんだよ。男装趣味!!」
『はっ!?ちょ、あたし言ったじゃん、罰ゲームだって!!』
「俺もだよ!!」
『へ!?』
こうして亜優が話してくれた、真実。
友達とのゲームで負けた亜優が受けることになった罰ゲーム。
それはなんと、〝女装してナンパされる〟。
その友達がメイクアップアーティスト志望でメイクの腕がプロ並だったため、亜優はその友達のメイク&その友達の姉の服でアユミになる。
そして出逢ったのが―――――ユウキ……つまり、あたしだった。
「…そっから、ユウキと会う事が楽しくなって……、何度も友達にやってもらって、何度もアユミになった。さすがに友達にヒかれたけど、…会いたかったんだ。」
『………』
「そんでもっかい、今度は友紀に会った。」
亜優が、ニッて笑う。
「勢いで告っちゃったけど、嬉しかったよ。付き合って、ずっとずっと楽しかった」
『……あたしも、楽しかった。』
あたしの口から、思わず言葉がこぼれる。
『……あたし、亜優の前では可愛い彼女で、女の子っぽい彼女でいたくて、無理してたりしたこと、あったけど…、亜優の前でも、たくさんたくさん楽しかった。嬉しかった。亜優の事、ちゃんと好きだった。…好きだよ、好きです、今でも…、本当に、好き』
「うん、…俺も。大好きだよ、友紀。」
亜優に抱きしめられる。
アユミだろうが友紀だろうが亜優だろうがユウキだろうが、今は関係なかった。
だって今ここにいるのは、
私が愛している貴方と
あなたが愛してくれてる私だから
『…ねぇ亜優』
「ん?」
『あたしね、少年漫画が好きで、ドジで、バカで、あんまり女の子っぽくなくて、今までの友紀とは少し違うかもしれないけど』
でもこれがあたしなんだ。
これが、橘 友紀なんだ。
『それでも、亜優の好きな人でいてもいいかな?』
『彼女』という箱におさまるだけじゃなくて。
ちゃんと亜優の『好きな人』でありたい。
「もちろん」
亜優は笑った。
あたしの大好きな笑顔で笑った。
「俺も…、完璧なわけじゃないし、カッコいいわけじゃないし、誰にも負けない何かがあるわけじゃない。嫉妬深いし、優柔不断だし、いろいろと友紀に迷惑かけたかもしれない」
『…』
「それでも、友紀の隣にいたい」
亜優が、そう言ってあたしを優しく見る。
『そんな亜優が、あたしは好きだから』
そう言うと、背の高い亜優からおでこにキスされる。
『あははっ』
「何?」
気付いてしまったあたしは、思わず笑ってしまった。
『あたしね、やっぱり亜優の事大好きなんだ』
だって、女の子の亜優にも普通の亜優にも恋しちゃったんだもん。
「俺も、きっとどこかでユウキに恋してたんだと思う」
亜優も、ははって笑う。
「俺たち、たぶん当分はお互いの事しか好きになれないと思うよ」
『だねっ!』
あはははっ、て笑いあって、ふと目が合って
ユウキなあたしと、アユミな亜優の唇が触れた。
これからも、いろんなことあると思うけど。
たくさん喧嘩して、たくさんもめるかもしれないね。
でもそしたら、この時の事を思い出して笑いあいたいね。
これほどにお互いの事を愛した、この時を。