彼氏と彼女の抱く絶対的な秘密。

『………え……?』

「矢代っ、おま…」

「え?あゆくん、瑛美なんか間違ったことぉ、言ったっけー?」



亜優に、彼女が、……いない?

なんで?あたしはじゃぁ何?


『どういう事?』

「えっとぉ、この前、聞いたんですよ。あゆくんって彼女いるのー、って。そしたらあゆくん、いないって言ったんですー。ねぇ、あゆくん?瑛美、嘘ついてないよねぇ?」

矢代さんにそう言われた亜優が、なんだか気難しそうな顔をしてうなずいた。




『へぇ、亜優にとってあたしは彼女じゃなかったんだね…。』

「友紀、」

『ねぇいつから?なんで?いつからあたし、亜優の彼女じゃなくなってた?いつからあたし、フられてたの?先に好きだとか言ってきたの、そっちじゃん』

「違う、友紀。お前は俺の彼女だよ」

『じゃぁなんで矢代さんに「彼女いない」って言ってんの!?ねぇ、なんであたしの存在を隠さないといけなかったの!?堂々と言えないような彼女だった?あたしが彼女なんて言うと、恥ずかしかった?ねぇ、どうして!?』

「それは」

「橘さぁんっ、落ち着いてくださいよっ!あゆくんが、困ってるじゃないですか。」


矢代さんが、亜優の腕をまた抱きしめる。

なんだかその姿を見ると、自分が勝手に騒いでるんじゃないかと思った。



もうどうでもいいと思ってしまった。


悪者は、あたしだと思った。





恥ずかしくなった。

消えたいと思った。

あたしは思わず校舎から飛び出た。


「友紀っ」

亜優の声なんてもうとらえたくない。



そのまま校門を抜けて、家まで走った。




最悪のバレンタイン。



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