合図で走れ
「それは……」
「あぁ……これは古傷です。」
そう。
左眉のすぐ下から左目、顎にかけてものすごい傷痕があるのだ。
ジュー……
いつの間にか足元にある黒い腕と水溜まりが蒸発していく。
こういうのは臭そうなイメージがあるが、案外臭わない。無臭だ。
“心臓を破壊した”
こういうことか。
「それにしても、貴方冷静ですね。」
自覚してます。
逃げもしなかったし、叫びもしなかった。
怖かったけど。
「ドアが閉まらなくなったんです。」
ドアノブを拾ってちらつかせる。