合図で走れ
「……今日が締切ですよね?」
「はい。」
「あと10分ほどで日付変わりますよ?」
「ですね。」
「…………」
「一昨日入稿したんで大丈夫ですよ。」
「ええ!?じゃあその原稿は!?」
「次の締切の分です。」
―――――――――――………
本当何なんだ。
「銭湯気持ち良かったですねー。」
「…………ですね……」
慣れすぎだろこの人。
あの後、お風呂に入っていないと言う彼女をすぐ近くの銭湯へ案内した。
今はその帰り道。
なんというか、この人は犬みたいだ。
すぐについてくるし。
着替えを貸すと普通に受け取るし。
着るし。
布団が一人分しか無いと言うと一緒に寝ても構わないとか言うし。
ほぼ初対面なのに名前を教えてくれた。
塚田 秋乃
ご丁寧に漢字まで教えてくれた。
これが彼女との、秋乃さんとの出会い。