紙ヒコーキとアオイくん
「……なんすか?」



どうやら、あたしは不躾に彼の顔やからだをじろじろと見つめてしまっていたらしい。

男の子は若干不愉快そうに眉を寄せ、かつ流し目であたしを見下ろしていた。

ハッとしたあたしは取り繕うように、パタパタと片手を振る。



「あ、ううんごめんね、なんでもないから。……えっと、ここは」

「見ての通り。弓道場です」



今さらながらの質問に、彼はあっさりと答えた。

辺りをぐるりと見回してみると、よく磨かれた床に座る彼のからだの横に、大きな弓が置かれていることにも気付く。

……こないだと今日、彼が持っていた細長い荷物の正体は、これだったのかな。

ていうかあたし、この学校にこんな立派な弓道場があるなんて知らなかったよ。



「……こっち」

「え?」

「座ったらどうですか」



相変わらずの無表情でそう彼が示すのは、茶色いふちの部分。

……表情は変わらないけれど、今あたしがここにいることに関して、迷惑がっているわけではないのか。

お言葉に甘えて、あたしはそこにかばんを置き、そっと腰掛けた。
< 14 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop