紙ヒコーキとアオイくん
「……アオイくん、弁護士になりたいんだ」

「そうですね」



小さなあたしの声に、あっさり、アオイくんは頷いた。

きゅっと、ひざの上の手を握りしめて。あたしは視線をそこに落とす。



「……いいなあ。夢、あって」

「別に、いいってこともないと思いますけど。本当になれるかどうかもまだわかんないし」

「でも、あたしにとっては目標があるってだけでも、うらやましいんだよ」



アオイくんは何も言わず、あたしの声に耳を傾けている。

その視線を感じながら、また、ぽつりと呟いた。



「……こわいんだよ。何にもない、自分がさ」

「──、」



ガシッ。

突然、ほんとに突然、腕を掴まれて、あたしは驚いて顔を上げた。

見上げるとアオイくんが、無表情でこちらを見下ろしていて。



「あ、アオイく……」

「──先輩、矢射ってみませんか?」

「……へ?」
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