紙ヒコーキとアオイくん
「え、えっと、こう?」



アオイくんに指示された通りの構えをしながら、あたしは彼に訊ねた。

それを受けて、彼はこくりと頷く。

今のあたしは、セーラー服のままではあるけど彼から皮の手袋?のようなものを借りて、弓道の基本的な動作を教えてもらっていた。


ていうか、き……きつっ!

普段運動なんかしないから、こうやって構えをとって静止してるだけでも、なんだかプルプルしてくるよ。



「そう。そのまま、今度は矢をひいてみて」

「え?! ちょ、待って、どう……っ」

「あー。そうじゃなくて、こう」



言いながらアオイくんが、あたしの背後に立った。

そしてそのまま──至極自然な動作で、後ろから腕をまわしてくる。


ふわりと、柔軟剤の香りがして。

どくん。心臓が、大きく鳴った。



「こっちの手は、こうして……」

「………」



自分のすぐ後ろからまわされた手が、あたしの手に重なって誘導する。

アオイくんとあたしは、背の高さがそれほど変わらなくて。身長160㎝のあたしに対し、きっと彼は、165㎝くらいなんじゃないかと思う。

だからその分、こうして並んだあたしと彼の顔の距離は、意図せずともどうしても近くなってしまう。

だけど──そんな事情に反し、今自分の手に重ねられているそれは、明らかに『男の子』のそれ。

あたしは柄にもなく、どうしてだか顔を熱くさせていた。
< 24 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop