紙ヒコーキとアオイくん
「……っ、」
小刻みに震えている、手のひら。
それを見下ろすあたしに気付いて、彼は小さく笑った。
「すっごい、気持ちいいでしょ? だから俺、弓道やめたくないんすよね」
「……うん……」
……うん。
何メートルも先にある、小さな的に照準を合わせて。
自分の感覚を研ぎ澄まし、矢を放つ。
その一連の動作はとても、高尚で、自分だけの空間で、そして無心になれる。
──少しだけ、わかった。君がここに、ひとりでも通い続ける理由。
未だじんじんとしびれている手をぎゅっと握りしめたところで、彼がまた、口を開いた。
「面倒くさいなあ、先輩は。何かをがんばることに、そんなに明確な理由はいらないと思うんだけど」
「え?」
思わず、目を見開いてアオイくんに顔を向ける。
彼はいつもの鉄仮面、だけどどこか真剣な表情で、あたしをまっすぐに見つめていた。
「何をそんなに悩んでるの? 全部完璧なものじゃないとダメなの? 完璧な理由が欲しいの?」
「ッ、」
「じゃあ俺が、理由をあげる」
そこまで言った彼が、不意に、笑みを浮かべる。
小刻みに震えている、手のひら。
それを見下ろすあたしに気付いて、彼は小さく笑った。
「すっごい、気持ちいいでしょ? だから俺、弓道やめたくないんすよね」
「……うん……」
……うん。
何メートルも先にある、小さな的に照準を合わせて。
自分の感覚を研ぎ澄まし、矢を放つ。
その一連の動作はとても、高尚で、自分だけの空間で、そして無心になれる。
──少しだけ、わかった。君がここに、ひとりでも通い続ける理由。
未だじんじんとしびれている手をぎゅっと握りしめたところで、彼がまた、口を開いた。
「面倒くさいなあ、先輩は。何かをがんばることに、そんなに明確な理由はいらないと思うんだけど」
「え?」
思わず、目を見開いてアオイくんに顔を向ける。
彼はいつもの鉄仮面、だけどどこか真剣な表情で、あたしをまっすぐに見つめていた。
「何をそんなに悩んでるの? 全部完璧なものじゃないとダメなの? 完璧な理由が欲しいの?」
「ッ、」
「じゃあ俺が、理由をあげる」
そこまで言った彼が、不意に、笑みを浮かべる。