紙ヒコーキとアオイくん
「けどある日、俺の部屋のドアを、両親ではない人物が叩きました。それは昔から俺がなついていた、父さんの弟……つまりまあ、おじだったわけですけど」

「………」

「頑なな俺にしびれを切らした父親が、どうやら連絡をしたみたいでした。どーせくだらない生活に戻るように説得しに来たんだろ、と俺が部屋の中から言うと、おじは『そんなつまんないことは言わねぇから中に入れろ』とのんきな声で話しました。……俺はおじの、自分の家系には珍しい適当な人柄が好きだったので、とりあえず部屋の中に通したんです」



あたしは床から視線を外して、もう1度彼の顔を見た。

アオイくんは先ほどまでとは違い、少しだけ、やわらかい表情をしていて。



「でまあ、説教が始まると思ったら、いきなりおじに『おまえ、将来やりたいことないのか?』って訊かれて」

「………」

「質問が唐突なのもそうですけど、正直、驚きました。……両親は、明らかに俺を医者にしたいと思っていたみたいで……まわりの大人たちも、疑いもなく俺が医者になると思ってて。だから今さら、そんな質問をされたことに驚いたんです」
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