紙ヒコーキとアオイくん
「俺が黙っていると、おじは『やりたいことがないんだったら、社会正義について考えつつ弱者救済すれば?』とたら~っと言ったんです。まあそのおじというのが、自分の事務所も構えてる弁護士だったわけですけど」

「………」

「おじが言うには、『あのアホ共見返してやりたいだろ? 医者になるのが嫌だったら、弁護士ならあいつらも文句言えないネームバリューもあるし。それにおまえみたいな骨のあるやつにこそ、自分の仕事を手伝ってもらいたいという下心もある。がはははは』って」



お……おじさん……なんてゴーカイであけすけなお人……。

呆気にとられるあたしの目の前で、やはり彼は、綺麗に正座をして話し続ける。



「元々、何事にも流されないおじには憧れみたいなものもあったし。そんなわけで、俺はあっさり、弁護士になる夢を持ったわけです」

「そ……そうだったんだ……」

「はい。ちなみに俺はそれ以来ちゃんと学校にも通って、自分のために勉強するようになりました。今は両親も俺のことを諦めたみたいで、あまり口うるさくもせず好きにやらせてくれます。まあ、あまり成績が芳しくないようだったらさすがにまた口出ししてくるでしょうけど」

「へー……」



自分とはまるで違う家庭環境を目の当たりにして、あたしは思わず感嘆の声をもらした。

そうか……この生意気で淡々としてる少年には、そんな過去が。

なんだか妙な高揚感に包まれながら、あたしは息をつく。
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