紙ヒコーキとアオイくん
「ん~気持ちいい~。アオイくんも、寝転んでみなよぉ」

「………」



どこか危ういくせに、意志の強い瞳をしているのも。

俺と一定の距離を保っているくせに、無防備なところも。


全部、気になって仕方ないのだ。



「……はぁ……」



あまりの警戒心のなさに、気を遣ってやってるのがなんだか馬鹿らしくなる。俺は深ーく、ため息を吐いた。

そうしてそのまま四つん這いで数歩進み、真上から、逆向きで彼女を見下ろす。



「……先輩。あんまり無防備だと、食べちゃいますよ?」

「…………へ?」



たっぷりの間の後、先輩は間抜けな声をもらしながらパチリと目を開けた。

そして距離の近さが予想外だったのか、びくっと首をすくめる。



「え、あ、アオイく……」

「──先輩は、俺のこと単なる後輩だと思ってるんでしょうけど」



けど俺は、そろそろ我慢の限界なんですよ。


さらりと、床に広がる彼女の髪に指を通した。

それからやさしい手つきで、やわらかそうなその頬を撫でる。

とたん、みるみる赤くなる春日先輩の顔に満足して、思わず口角を上げた。



「ああ、まったく意識されてないってことは、ないのか」

「なっ、あっ、あお、」

「──黙って」
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