紙ヒコーキとアオイくん
同じ光景を見つめるあたしと杏子の声が、重なる。



「あちゃ~……」

「あーあ」



紙ヒコーキは見事に、男子生徒の後頭部へと直撃した。

下の方から、「ぅお!」と小さく声が聞こえる。

インパクトの直後、一度はとっさに身を隠した窓の下から、あたしはそろそろと立ち上がる。

どっちにしろ、あの紙ヒコーキ……もとい進路希望調査票に、名前書いちゃってるからなぁ。



「おーい! そこの人ー!」



隣りでギョッとする杏子は構わずに。

紙ヒコーキを持ったままあたりを見回していたその男の子に向かって、思いきり手を振りながら呼びかけた。

彼はあたしの声に気付いて、まっすぐにこちらを見上げてくる。

その顔は、無表情。



「……この紙ヒコーキ、先輩のっすか?」



高くも低くもない、だけど耳に心地良い声で、そう言われた。

“先輩”。2年5組の教室から顔を出すあたしを見てそう言ったということは、きっと彼は1年生なのだろう。

あたしはさらに窓から身を乗り出しながら、応える。
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