一日で君を好きになる
お化け屋敷や喫茶店などが並ぶ校内。

いつもの学校が、ガラリと雰囲気を変えている。

わいわいと賑わうその中に紛れて、私は早瀬君の隣をぎこちなく歩く。

「鈴木さんのクラスの出し物ってなんなん?」

クレープ屋をやっているクラスの教室を横目に見ながら、早瀬君は聞いた。

「私のクラスは、中庭のステージでダンスをするよ。」

「そうなん?いつ?」

「明日の午後」

「そっかー。楽しみにしてるわ!」

嬉しいのかなんなのか…分からないけど、早瀬君はニコニコしている。

私はあんまりやりたくないんだけどね…ダンス。

だって、私ダンス下手だし、似合わないもん。

「早瀬君のクラスは?」

自分の話を流すように、私は早瀬君に聞いた。

「俺のクラスは、コスプレ喫茶!!」

コスプレ…ですか?

「そ、そうなんだ。えっと…ちなみに早瀬君はなんのコスプレを?」

「俺は医者のコスプレ!結構似合ってるって評判やねんで?」

確かに似合いそうだな…。

白衣。

「喫茶店やるんだったら、早瀬君、行かなきゃダメなんじゃないの?」

得意げに話す彼に聞く。

「大丈夫大丈夫!今日一日自由にしてもらったかわりに、明日一日出る事になってるから!」



ちょっとドキッとした。

だってそれって、今日、私と一日過ごすためにそうしてくれたって事だよね?



「そうなんだ」

"ありがとう"って言うべきだったかも知れないけど、私の口から出たのはなんとも軽い言葉だった。
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