tender dragon Ⅲ
「そっか、よかった」
隣を歩く希龍くんを見れるだけで幸せ。
散歩だって立派なデートだもん。
肩が触れ合うくらい近づいて歩くのも、わざとゆっくり歩くのも、色んなこと話しながら歩くのも、全部好き。
のんびりしたこの空気が好き。
「あたし、春好きだな」
夏も秋も冬も好きだけど、春が一番。
「こうやってのんびり散歩できるでしょ?」
色んなところに行くデートもいいけど、あたしはこういうのが好き。
「散歩かー。」
「うん、散歩。希龍くんも好き?」
「好きだけど、俺は春じゃなくても散歩するつもりだよ?」
なんて、あたしが考えてもみなかった答えが帰ってきた。
「え?」
「夏も秋も冬も、しようと思えばいくらだって出来るからね。あ、もちろん相手は美波だけど」
笑顔でそんなこと言うから、あたしも自然と笑顔になってしまう。