ヘタレなヤクザさん

ヤクザさんのライバル


結局、渋々だが陵介は私の同棲を許してくれた。ここに住む間の部屋はとても広くて、慣れない高級そうなベッドは眠りを妨げた。

「葵さん、陵介様を起こしてきてくれませんか」
「はい?!」

食後のお茶を淹れながら、とんでもないことを言ったのは橘さん。ここの使用人で陵介とも長い付き合いらしい

少し長目の黒髪をワックスで後ろに流していて、私は中々かっこいいと思う。

「本来なら私の仕事ですが、これからは葵さんに頼みます。それに陵介様とより話せる良い機会でしょう」
「…はぁ」
「では、部屋まで案内しますね」

そう言って怖いぐらいに橘さんはにっこりと笑うと、私を連れて陵介の部屋へと向かう。

「部屋の前にいるので何かあったら叫んでください」
「逆に、何かあるんですか」
「彼、低血圧で機嫌が最高に悪いんです」

言いながら捲られた袖のシャツ、橘さんの腕には大きな痛々しい痣があった。私の顔から血の気が一気に引くのがわかる

「…私、ここで死ぬんですかね」
「検討を祈ります」



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