イチイの花
コンコン
母「柚希… ごはん、置いておくからね…」
コトン
ドアの前に食器が置かれる音
スリッパの音を立てながら遠ざかっていく母の足音
掠れたその音でさえ、私をあざ笑っているように聞こえた
締め切ったピンクのカーテン
真っ暗なその部屋に広がる青白い光
この部屋の住人「ゆずき」は、ノートパソコンを閉じ
すべての光を排除したその部屋で眠りに落ちた
彼女の頬には
―――――――――――涙の筋
そのしずくが悲しみのものか、憎しみのものか
彼女も知らない