Only One──君は特別な人──
もっと早く貴広の魅力に気付いていたかった。

そうすれば、こんな幸せで穏やかな日々をもっと早く過ごせたかもしれないのに。

あたしってつくづく男を見る目がなかったんだと痛感した。


「もえ」

貴広が名前を呼び、抱きしめられていた体を離した。

不意にぶつかる視線にドキドキ。

“キスがしたい”──一生懸命の上目遣いで貴広に訴える。

なのに…。


「──今からどうしようか?」

「へっ?」


あたしの訴えは通じていなかった。

キスするような展開になることはなかった。


「もえ帰って来たばっかで疲れてるよな? 
どこか出かけるのはやめて、家でゆっくりする?」

「う…うん」


正直、出かけようが家にいようがどっちでも良かった。
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