Only One──君は特別な人──
貴広は何も言わず、車をスタートさせた。

あたしは謝るきっかけを探していたけど、見つけられずじまい。

互いに無言のまま。こんなこと初めてだ。


気が付くと車は海沿いを走っていた。

どこへ行くんだろう?

こんなことを思っていると、夏になると海水浴場の駐車場になる所に車を停車した。


「──少し歩こうか? 寒いけどいい?」

「うん」


車から降りるとあたしと貴広は砂浜を手をつないで歩く。

ザザーンと波の音がやけに響く。

季節外れの海岸。寒さがロマンティックな雰囲気を演出している。

貴広が立ち止まりあたしも立ち止まる。

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