あの日の恋を、もう一度
「あら。秀一、今日は遅くまで学校に残るんじゃなかったの?」
「と思ってたんだけど、今日は残ったらダメみたいでさ」
「あらそう」
ああ、懐かしい。
声はずいぶん低くなっているけれど、懐かしい。
すごく、懐かしくてたまらない。
声を聞いただけで泣きそうになっている私は、おかしいのだろうか。
これが本心だと、気付いていたはずなのに。
蓋をしてしまったあの日の私がとても疎ましい。
懐かしくなってるのは、不思議な話じゃない。
けれど。
そうとは違う感情が胸を占める。
「玄関に靴あったけど、誰か来てるのか?」
「…ええ」
「……もしかして」
バタバタと。
こちらに向かって慌ただしく、急かしたように歩く、足音。
ああ、もう。
私は彼の顔は見れない。
見る資格など、ない。
なのに、
「やっぱり、絢芽か…」
彼と、会ってしまう。