あの日の恋を、もう一度
「…久しぶりだね、河合」
「…そうだな」
“絢芽”と。
まだそう呼んでくれるの?
あんなに最低なことをしたのに。
「…なんで私ってわかったの?」
「…香水。変えてないだろ?」
「…うん」
本当は、ほんの少しだけ期待していた。
―――『私が来ている』と、気付いてもらえたら。
彼からもらった香水を、ずっと愛用していた。
気持ち悪いと思われること覚悟で。
…また、あなたに私の存在を気付いてほしくて。
「…知世ちゃんに、渡しておいて貰えますか?」
「あ、…ええ。返しに行っただけなのに遅いとお母さんが心配なさるものね。長居させてしまってごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ長居してしまってすみません」
なんで。
なんで、私のことを見るの?
私、あなたにひどい事しかしてないんだよ?
いい記憶なんてないでしょ?
なのに。