あの日の恋を、もう一度
「…てっきり私は、高校に入ってからも続いているものだとばかり思っていたのよ。だから知世から聞くまで知らなかったの。あの子ったら、高校でも彼女を作らなかったから…」
「…嘘、ですよ。だって…」
「もしかしたら、学校では作っていたのかもしれないけれど、家には一度も連れてきたことは無かったわね」
「……」
やめてよ。
そんな事を聞いたら、期待してしまう。
―――もしかしたら、まだ私に気があるんじゃないかって。
そんな淡い期待はしたくない。
だって私は、最低な理由で、彼の手を離してしまったのだから。
「知世が嘆いていたわ。『どうして絢芽ちゃん、別れちゃったの』って。…勿論、私もよ?」
「…」
そう言ってくださることは、本当に嬉しい。
なかなかないことだって思う。
でも、それでも。
私はもう、あの日の私に戻ることなど、できない。
寒かった。
ずっと。
外が寒いからかな、冬だからかな。
いいや―――心が寒かった、ずっと。
その理由はなんとなくわかっていたはずなのに、気付かないふりをしていた。