あの日の恋を、もう一度





「…てっきり私は、高校に入ってからも続いているものだとばかり思っていたのよ。だから知世から聞くまで知らなかったの。あの子ったら、高校でも彼女を作らなかったから…」

「…嘘、ですよ。だって…」

「もしかしたら、学校では作っていたのかもしれないけれど、家には一度も連れてきたことは無かったわね」

「……」





やめてよ。
そんな事を聞いたら、期待してしまう。

―――もしかしたら、まだ私に気があるんじゃないかって。


そんな淡い期待はしたくない。
だって私は、最低な理由で、彼の手を離してしまったのだから。





「知世が嘆いていたわ。『どうして絢芽ちゃん、別れちゃったの』って。…勿論、私もよ?」

「…」





そう言ってくださることは、本当に嬉しい。
なかなかないことだって思う。

でも、それでも。
私はもう、あの日の私に戻ることなど、できない。


寒かった。
ずっと。

外が寒いからかな、冬だからかな。
いいや―――心が寒かった、ずっと。


その理由はなんとなくわかっていたはずなのに、気付かないふりをしていた。






< 8 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop