シャッターチャンス


ほんの少しだけ覚醒した頭を揺らすと、ふいに眩暈に襲われた。

体が妙に熱く、立ち上がる足取りがふらつく。
ドアの入り口までどうにか進むと、ドアを開けて少しだけ声を張る。

「お母さーん。体温計どこ?」

一呼吸置く感覚の後、私の問いかけに怪訝な顔をしたお母さんが部屋に来る。

「もしかして熱出したの?」
「分かんない。体だるいし、頭痛いんだよね。」

少し溜息交じりに差し出された体温計を受け取り、もう一度ベッドに戻る。

「昨日夜までふらふらしてるからよ。」

叱責の言葉を残して閉まるドアを睨む気力さえなく、体温計が音を立てるのを待つ。


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