シャッターチャンス


彼女は私の存在を、きっと知らない。
入学式の日、レンズ越しに見つめ合っていた相手だなんて。

もし知ったらどんな反応をするんだろう?
泣いていたことはばれていたんだろうか?


あの日から、気付けばずっと彼女の事を考えている。
一世一代の失恋をしたはずなのに、驚くほどに気持ちはスッキリとしている。
今では元彼なんていなかったように、頭の中を彼女の存在が占めている。

揺られる電車の中、物思いにふけりながらふと気付いた。

(しまった、別れたことまだ夏希に言ってない…)

これはマズイとばかりに慌てて話題を変えた。


< 63 / 80 >

この作品をシェア

pagetop