生徒会室まで来なさい。


生徒指導室のガラス張りのドアには「選挙管理委員会」という張り紙がなされてい
た。
毎年この時期は、この部屋が「選挙管理委員会室」ということでキープされている。


「失礼しまーす」


亜紀は私の腕を掴んだ反対の手で、ガラスのドアをノックする。
中に居る数名がぱっと明るい顔をこちらに向けて、慌てて扉を開ける。


「もしかして、副会長!?」

「副島(そえじま)さん、立候補してくれるの!?」

「そえじー神!そえじが副会長ならぴったりだよー!」


委員の人たちは、ドアを開くなり矢継ぎ早に亜紀に声をかける。
顔を輝かせて、まるでお菓子を与えられた子供のよう。


「あー違う違う、あたしじゃなくてこっち!
村越沙奈江が立候補しまーす!」


亜紀がそう言った瞬間、委員の人はみんな拍子抜けした顔を…
と思いきや、顔のキラキラをいっせいに私の方に向けた。


「もしかして、副会長!?」

「村越(むらこし)さん、立候補してくれるの!?」

「ムラムラ神!ムラムラが副会長ならぴったりだよー!」


つい今しがた聞いた台詞を、同じテンポで繰り返した。
この人たちは、ゲームに出てくる村人役なのか?
何度話しかけても、同じことばっかりひたすら言い続けるわけ?


いや、それよりも…


「ていうか、ムラムラはやめてよ!!
そもそも、あたし立候補しないから!!」


そう、私は生徒会に入る気なんてこれっぽっちもないんだから!!

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