君の目線の先に
「何ため息ついてるの?」
隣から拓海の声。
昔からの癖か、私は無意識のうちに拓海の隣を歩いてるらしい。
「んー、ちょっとね。」
「また、どうせ受験のことでも考えてたんだろ?」
「うん。
…真っ暗で、月の灯りしかない景色と自分が重なってね。」
…ハハハ、と笑いながら冗談ぽく行ったつもりが、自分の声は余りにも力が抜けていて情けない声だった。
「そんなの、みんな一緒だと思う。」
拓海はまた、首を傾げながら前に目線を向けた。
そこには、いつもよりはしゃいでいる、私のクラスメート達。
…そっか。
みんな、同じ気持ちなのか。
怖さや不安に押しつぶされないように、みんな前を向いて歩いているのか。