初恋が実るとき・前編~あの夏を忘れない~
近くの大きな木の下に逃げ込んだ
「ははっ、ビショビショだよぉ」
雨に濡れた髪を手で拭った


でも
びしょ濡れになったけど
なぜかあたしは嬉しかった


ドキドキした


繋いだ手よりも
何よりも


同じ場所にいる
あたしの隣にまもるさんがいる



それだけで・・・・
あたしは幸せだった


大きな木の下で雨宿り
それでも
このどしゃ降りでは雨は避けられなかった




「風引いちゃうね」
まもるさんはそう言って
あたしの髪をタオルで拭いてくれた


(きゅんっ)
って胸が鳴る



始め優しく髪を拭いてくれてたのに


グシャグシャ!


おもいっきし
グシャグシャって髪を拭かれた!!



「もぉ、髪ぐちゃぐちゃになっちゃうよぉ」

文句を言ってみたけど
本音は嬉しかった


ふざけてるまもるさんも
楽しそう


おかしくなって2人で笑いあった


もぉ!

あたし一応けが人だぞ!!








ふっと
まもるさんの手が止まる



「傷・・・残らなければいいね」
あたしの頬の大きな絆創膏を指でなぞる




見上げた先には真剣なまもるさんの顔があった




ドキっ




目が合う





ドキドキし過ぎて
心臓の音が聞こえちゃうかも




ゆっくりとまもるさんの顔が近づいてきた




あたしも目を閉じる






土砂降りの中
雲に隠れてしまって
お月様の光も届かない空の下



まもるさんと初めてキスをした



誰も見てない
2人だけの秘密





ずっとずっと
この夏が続くといいな



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