初恋が実るとき・前編~あの夏を忘れない~
神社の境内の中の大きな木の下
木陰に並んで座った


もう少し暗くなると
花火が上がるそうだ


「小さい頃ね、ここでかくれんぼして遊んだの」
あの写真を見た時から
記憶が少しずつ蘇ってきていた


大人になると
今が精いっぱいで
昔を懐かしむこともなくなる



あんなに楽しかったのに・・・・・


1日中走り回って
1日中笑いあって


そんな日常は
どのくらい送ってないだろう





「来年も来たいなぁ」
なんて
ちょっと勇気を出して聞いてみた




「…うん」

あれ?
何かが変ヘン…

なんかいつものまもるさんじゃないような



不思議な胸騒ぎを感じた



なんだろ
ちょっと顔色が変わったような


女の第六感は当たるのだぞ!






少し心配になって
まさるさんの顔を覗き込む


そこには
いつもの優しい笑顔があった



「今年の花火は絶対に見たかったんだ・・・・・・と・・・」
ドーーーン!!


まもるさんの言葉と花火が重なった



最後聞き取れなかったよぉ



「花火始まったね、川原に下りてみよう」


立ちあがったまもるさんに続いて
後についた







花火に消えたその言葉を
あなたの口から聞くことは出来なかったね


『今年の花火』にどんな意味があるのかさえ
あの時のあたしは気にもならなかった





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