初恋が実るとき・前編~あの夏を忘れない~
固く結んだ手にぎゅっと力を入れる



泣かない約束だ




それに気づいたさとるは
突然、あたしを抱き寄せた



「ごめん!・・・いいよ」
抱きしめる腕に力がこもる


「うっ」
あまりにさとるの胸があったかくて
嗚咽がこぼれる


「泣くななんて嘘だよ・・・泣き虫ゆうか」
さとるの言葉は
昔と違って優しかった・・・・



あたしは
声を押し殺して・・・・泣いた




まもるさんではなく
さとるの胸で・・・・



目覚めることのない
大好きなお兄ちゃんの前で・・・・


声を押し殺して泣いた・・・


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