初恋が実るとき・前編~あの夏を忘れない~
「ゆう・・かちゃん」
さとるの口から
振り絞るように言葉がもれた



さとる?


ふいに名前を呼ばれ
緊張がはしる


ううん
違う・・・


分かるの
なぜか感じるの



「ま、まもるさん?」




力なく身体を起こしたのは
紛れもなく・・・・・まもるさんだった








「まもるさん!?本当に!?」
頬に流れる涙を
そっと拭ってくれる



まもるさんだ・・・
本物のまもるさんだ





「ごめんね・・・
あまり時間がなさそうだ・・・」


さっきよりは力強く身体を起こしたけど
なんか身体が辛そう



『時間がない』という言葉に
あたしの涙は止まることなくあふれてきた


「ゆうかちゃん、よく聞いて」


あったかい手であたしの頬を両手で包む




あたしはイヤイヤをするように首をふった
嫌だ・・・


「最後のお願いだから・・・」
まもるさんの目から
すーーっと涙がこぼれた



やっと分かったよ
ちゃんとあたしが恋をしたのは
本物のまもるさんで・・・


でも
この身体は・・・・
さとるの・・・なんだね・・・

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