顔の知らない大好きな貴方へ
「よし、やっとあっち行った。」


『そいつ』はそういうと私の口を塞いでいた手を離した。


私はすかさず『そいつ』の顔を見る。




どんな泥棒さんだろう?中年のおじさんだろうか……



そんななんの期待ももたない気持ちで私は貴方をみた。がそれは間違いだった。



うっわあー。




『イケメン』その言葉がぴったりと当てはまるようなそんな男子だった。



髪はちょっと茶色で毛先を無造作に遊ばせてる。耳にはピアスを三個。キレイな目をしていて、瞳は大きい。さっきは気づかなかったけど、いい香りがする。





何年生だろう。同じ年にはみえないけど・・・。





「あ、さんきゅーな。さっきまっちゃんから呼び出しくらって逃げてたとこ。よかったよ。いい隠れ場所があって。」



まっちゃん、というのはさっきの先生のあだ名らしい。井上誠先生だから「まっちゃん」



私達は普通に「誠先生」って呼ぶけど、チャラいひとは「まっちゃん」と呼んでいるらしい。



「い、いえ。大丈夫・・・です」


や、なんか。ちょっと。驚いた。っていうか男子とこんなに話したのいつぶりかな。



「ぶっ。ってか何で敬語?一年だよね。」


『そいつ』はそういって私の目を見ながら話す。嘘のない。透き通った瞳。




「う、うん。一年だよ。」


私はなるべくそいつの目を見ないように顔を背けた。なんとなく見てしまったらそいつの瞳に吸い込まれていきそうなそんな気持ちになったからだ。



「ふーん。じゃタメじゃん。てか名前なに?」


「赤星……蘭」


「すっげーっ!めずらしーな。」


うん。毎回言われる。でもなんかうれしい。かも


「名前は?」


今度は逆に私がそいつの名前を聞く


「西谷拓」


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