顔の知らない大好きな貴方へ
「ぉーぃ。ねぇねぇ。吉田君。教科書忘れてきたの?」


3時間目。私の隣の席の吉田君が、いつもは授業の前に教科書を開いて予習している姿で有名なのに、なぜか今日は教科書を開かず、焦った様子で時計とにらめっこしていた。


まあ、ほっとけばそれで済む話なんだろうけど、吉田君とはあまり話したこともなかったし、このことをきっかけにもっと吉田君と話してみたいという気持ちが膨らんだからでもあった。



吉田君の性格を一言で言うと「がり勉。」




毎回テストでは上位をキープするほどの学力の持ち主である。外見もまさに「がり勉」で7:3にわけた前髪は昭和時代のがり勉とも呼ばれている。



そして黒ぶちのおおきなめがねをかけ、制服はまだぴかぴかでまるで制服屋さんにある制服を着ているマネキンのようにぴっしりと着ていた。




「うん。実は、友達の家に・・・・ゎ、わすれていって、し、しまったのだ。」



ぷぷっ!喋り方もなんか頭よさそうに「なのだ」でしめているところが無性に面白かった。そうかそうか!友達と遊んでたんだね。吉田君って友達と話してるところみたことないけど・・・。
< 14 / 50 >

この作品をシェア

pagetop