顔の知らない大好きな貴方へ

♯2


理想の恋……


私は夢の中で『理想』について考えていた。


男子恐怖症の私には夢のまた夢のような話なんだろうけど、


私のことを一番必要としてくれて、思いが通じあってる…そんな関係に憧れるのだ。


よく高校生が公園のベンチにカップルで腰かけて、



卵焼きには醤油だ!!とか塩だ!!とか言い合ってる光景に憧れた。



そんなしょーもないことで喧嘩になれることがうらやましかった。



男子恐怖症が恋したいなんて矛盾した話だよ…





ミーンミンミンミンミーン…





ミーンミンミンミンミーン…







せっかくすやすやと気持ちよく寝ていたのにセミの声は容赦なく私の睡眠の邪魔をする。





「ああああっ!もう」





セミの声がうるさくなって私は目を開けた。




時刻は午後6時……





うわ。私に時間も寝てたの?辺りはもう真っ暗でさっきまで部活をしていた野球部もグランド整備を行っていた。


だれもいない教室には吹奏楽部のフルートの音が一階の音楽室から聞こえてくる。





よし.そろそろ帰ろう。




私は重い腰をよっこらしょとたたせてまだ新品のスクールバックを背負った。




そのとき…

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