砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
第1章 蜜月遊戯
(1)昼も夜も
クアルン暦六二〇年、五番目にあたるアイヤールの月。
半島の大部分を占める大国クアルン王国。そこには“狂王”と呼ばれる、サクル王が存在した。
王はこの月、国民や臣下が切望する正妃を娶る。
花嫁は、東の大国とクアルン王国に挟まれた小国、パスィール公国のシーリーン王女。
当初の予定とは人が入れ替わり、当然、花嫁の名前も変わる。
だが、狂王の認めた花嫁に逆らう者などいるはずもなかった――。
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