砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)

(2)闇を制す光

ドゥルジの攻撃を受け、サクルは砂上に倒れ込む。

彼の上には月の光が降り注ぎ、幻想的なまでに全身の輪郭を揺らめかせていた。

幽光にぼやけるサクルの身体はピクリとも動かず、ただ、彼から溢れ出る液体は、王の纏う白いトーブを別の色に染めていく。


それを目にして、ドゥルジは狂喜の声を上げた。


「やったわ! あたしが倒したのよ! アーッハハハハハ! これで大手を振って帰れるわ」


悪魔の中でも人間にちょっかいを出す連中は、力があるだけで上級悪魔に従えぬ者や、考える能力の足りぬ者が多い。

地獄から追放同然でたたき出され、戻るには相当の死体を集めなければならないのだ。

それには“狂王”の死体などうってつけである。

ドゥルジとひと纏めに呼ばれる地位から抜け出し、正式な悪魔の呼び名を与えてもらえるかもしれない。

ドゥルジは悲願達成に、踊り出さんばかりの喜びようだった。


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