砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
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水音が聞こえる。

リーンは少しずつ鮮明になる意識の中で、サクルの愛撫を思い出していた。

肌を唇でなぞり、ところどころ舌先を這わせる。ゆっくり、ゆっくり味わうように、サクルはリーンの全身を堪能するのだ。

激しくされることもあるが、それでも、サクルの愛撫は信じられないほど優しい。


だから、リーンも間違えてしまった。愛されているのだ、と。

きっと、サクルが王でなければ今も思っていただろう。自分はこの男性の愛を独占している。そう思わせるような、愛情溢れる指先だった。


今も、その指がリーンの肌を撫でている。


『……リーン……どこにいる? リーン……』


夢の中でサクルの声が聞こえ続けていた。


(わたしはここにいます。サクルさま……お許しください。スワイド王子にあなた様の名前を知られてしまいました。わたしが、話を聞いてもよいと思ったばかりに……)


スワイド王子はサクルの名前を知ってどうするつもりなのか。

リーンが耳にした最後の言葉、『これで狂王の命を奪える』スワイドはそう言った。


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