砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
両手首を縛られたリーンは自在に寝返りすら打てない。

それをいいことに、男の両手が胸を緩く押し回す。


「いや……いや……やめて」


背骨に沿って、温かいものが這い上がってくる。

その感触にリーンは覚えがあった。触れているのは唇、時折、生温かい吐息がかかる。そして、首の後ろにたどり着いたとき、「ひゃっ!」ぬるりとした感触にリーンは悲鳴を上げた。

舌でリーンの首筋や肩の辺りを舐め回している。

そのとき、片方の胸がようやく解放された。

安堵したのも束の間、自由になった手はリーンの臍(へそ)を撫でたあと、下腹部を通り、茂みの中に潜り込んだ。


「ダメッ! そこはダメです。お願い……スワイド王子、やめてください!」


リーンは泣くように叫んだ。


(助けて……助けて、サク……)


心の中でサクルの名を呼びかけ、慌てて打ち消す。

もし、手遅れでないなら、これ以上王の名を呼んではいけない。助けに来て欲しいと望んでは駄目なのだ。


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