砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
頭の中が真っ白だ。

生涯サクルだけ、という誓いを破ってしまった。

自ら望んだことではないが、そんな言い訳があのサクルに通用するとは思えない。

この身体だけがサクルを繋ぐ望みだったのに。他人によって穢されてしまった身体など、二度と触れてはもらえないだろう。


しかも血の繋がった兄妹で、夫ある身で姦淫の罪を犯してしまった。

もし、スワイドが悪魔に乗り移られていたとしたら……。


(わたしは悪魔と結ばれてしまったの?)


そのときはこのまま地獄に連れて行かれるのかもしれない。

だがもう、サクルの傍にいられぬ身。ならば、生きてこの世界に留まる必要もない。


リーンが絶望に包み込まれたとき、体内に蠢く熱を感じた。ソレは予想以上に緩慢な動きで、リーンの聖域を侵し始める。


何もかもが壊されていく。


サクルとの大切な思い出がすべて、粉々に砕かれ、踏み躙られる。


「いやあーーっ! もう殺して! もう、いや……助けて……お願い、助けて……サクルさまーーっ!!」


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