砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
その意味がわかったとき、リーンはふわっと笑みを浮かべる。

そして素早く立ち上がり、「失礼いたします、陛下」そう言ってサクルの膝の上に腰を下ろす。


「きゃっ……あん」


軽く座るはずが、背後からギュッと抱きしめられ……それは、予想以上の密着度だ。


「私を蔑ろにするなら、二度と“愛している”と言ってやらぬぞ」

「……もう、愛してくださらないのですか?」

「いや……」

「陛下の愛を失えば、わたしは二度と笑えません。きっと泣き疲れて、わたし自身がオアシスになってしまうと思います」


サクルの素肌にもたれかかり、リーンは泣きそうな口調で呟いた。


「ああ、わかった! 私の負けだ!」


その大袈裟な口ぶりに、リーンはクスクス笑う。


「リーン、人払いをしてもよいか?」

「まあ、陛下がわたしにお尋ねになるなんて……」


果てしない距離、砂漠の上を渡ってきた熱砂の風が、宮殿の中二階を吹き抜ける。

そこには“狂王”の愛を一身に受ける正妃と、砂漠で無敵を誇る王の姿があった。




                              ~fin~




< 133 / 134 >

この作品をシェア

pagetop