砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
「レイラー王女……さま。アミーンどののことが好きで、あんな手段を取られたのではないのですか?」

「やめてちょうだい。身分が違うじゃないの」

「では、どうしてあんな酷いことを? 陛下が寛大なお心でお許しくださったから助かったんですよ。それにもし、アミーンどのに愛する女性がいたらどうするおつもりだったのですか? クライシュ族の方たちまで巻き込んで、いったい何人が命を落としたか……」

リーンは目の前で死んでいった多くの兵士や侍女を思い出し、涙が零れそうになる。

しかし、レイラーはそんなリーンに冷たい目を向けた。


「やはりお前はクアルン王の正妃には相応しくないわ。侍女や兵士がどうだと言うの? 替えなど幾らでもいるではないの。わたくしも王の妃にしていただくつもりよ。お前からも王に頼みなさい。――可愛い妹と離れたくありません。どうぞ私と同じ立場に――そう言いなさい!」


リーンはなんと答えればいいのかわからず、目の前に立つレイラーが魔物(ワーディ)のように思えてくるのだった。



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