砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
公国には三人の王子がいる。どう考えても、レイラーはどこかの国に嫁ぐことになるだろう。

実際の純潔はともかく、レイラーの評判は地に堕ちてしまった。年頃の王族か豪族の正妻に、と望まれればいいが……年老いた男性の愛妾として、ハーレムに入れられることすら覚悟しなければならない状況だ。

なのに、当の本人はまるで理解していない。

今回のことも国に戻れば酷く叱られるだろう。侍女あがりのリーンにすらわかることなのに、レイラーは自分の望みならなんでも叶えられると思い込んでいる。

この宮殿内で与えられている待遇ですら、リーンのおかげであるなど考えてもいない。


「お前が望まねば、あの女など地下の石牢で充分なのだ」

「サクルさまにはご配慮いただいて、ありがたく思っています。でも……父の名もなく、天涯孤独と思っていたわたしにとって、血の繋がった妹なのです。どれほど愚かな真似をしても、砂嵐に巻き込まれるかもしれない魔物の潜む砂漠に、放り出すことなどできません」


リーンは手を前で組み、懸命にサクルに言った。


「それに、レイラー王女が愚かなことをしてくれたおかげで、わたしはサクルさまの妻になれました」
 

これにはサクルも文句が言えないらしく、ふいに手を動かし始めた。


「私に感謝しろと言うのか?」

「まさか! とんでもございません。わたしはいつも、サクルさまに感謝しておりま……ぁ、やぁ」


夜着の薄い布の上から、サクルは盛り上がった胸を鷲づかみにした。


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