砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
リーンはおずおずと小さな手を胸に当てた。

布地の上から触れると、「脱げ」と命じられ、最後の布切れ一枚まで身体から剥がされる。

そのまま、直接、自らの乳房に手を添えた。どうすればいいのか迷ったが、サクルが触れるようにひとまずゆっくりと押し回してみる。

自分で触れてもこそばゆいだけで、とても気持ちいいと思えるものではなかった。だが、無言で見つめるサクルの視線に、リーンは息が上がり始める。


「膝を立て、脚を開き、私によく見えるようにしてみろ」


膝を立てるまではどうにかできた。

だが、その脚を開くのはなかなか勇気が必要だ。


「サ、サクルさま……どうか、お許しください」

「ならん。自分で触れてみろ。やらねば……さそり女を砂に埋めるぞ」


今夜のサクルの口調は酷く辛らつだ。

そう言えば昼間、カリム・アリーが『火急の件』と王を呼びに来た。あの場所で何が行われているか、承知の上で来たのだと思う。

よほど急いでいたのだろう。だが、リーンは何も聞かされていない。

サクルの機嫌が今ひとつなのは、そのせいもあるのかもしれない。

リーンは諦め、脚を開いた。


「何があろうと、お前は私に従え。たとえ、私がどんなことをしても……王の花嫁であることを忘れるな」


サクルの言葉を他人事のように聞きながら、リーンは愛する夫に肢体を開いていく。


「ええ。ええ……もちろんです。愛しています、サクルさま……わたしはあなたについて参ります」


熱に浮かされたように口走り、リーンはサクルの腕の中に落ちていった。


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