砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
『私はお前のことが嫌いではない』
それだけだった。
彼の望むままに抱かれて、飽きられる前に後継者となる男子を産まなければ、正妃ではいられなくなるかもしれない。
それが王の妃となる者の務め。納得して結婚したはずなのに。
だが、サクルを王の側近と思っていたときのほうが身近に感じられた気がする。
王である彼はどこか遠くに思え、リーンは寂しかった。
――もう戻りましょう。
そんな顔でシャーヒーンに真っ白い布を差し出される。
「ええ、そうね。ねえ、シャーヒーン。わたし、今のあなたも素敵だと思うけど、大空を舞うあなたもとても美しいと思うわ」
足を拭きながら思ったとおりのことを口にすると、シャーヒーンは嬉しそうにニッコリと笑った。
白鷹を目にしたのは、あのときが初めてのこと。その彼女がどうして人の姿にもなれるのか。おそらく神か悪魔の力であろうとは思う。
知りたいとも思ったが、必要ならカリムのほうから教えてくれるだろう。
どんな姿であれ、シャーヒーンから発する気配は穏やかだ。
リーンがそれを素直に受け入れると、言葉がなくてもシャーヒーンの心がますます伝わるようになった。
リーンが立ち上がったとき、視界の端で緑が揺れた。シャーヒーンのほうが先に気づき、リーンの前に立つ。
すると、緑を掻き分け姿を見せたのはスワイドだった。
それだけだった。
彼の望むままに抱かれて、飽きられる前に後継者となる男子を産まなければ、正妃ではいられなくなるかもしれない。
それが王の妃となる者の務め。納得して結婚したはずなのに。
だが、サクルを王の側近と思っていたときのほうが身近に感じられた気がする。
王である彼はどこか遠くに思え、リーンは寂しかった。
――もう戻りましょう。
そんな顔でシャーヒーンに真っ白い布を差し出される。
「ええ、そうね。ねえ、シャーヒーン。わたし、今のあなたも素敵だと思うけど、大空を舞うあなたもとても美しいと思うわ」
足を拭きながら思ったとおりのことを口にすると、シャーヒーンは嬉しそうにニッコリと笑った。
白鷹を目にしたのは、あのときが初めてのこと。その彼女がどうして人の姿にもなれるのか。おそらく神か悪魔の力であろうとは思う。
知りたいとも思ったが、必要ならカリムのほうから教えてくれるだろう。
どんな姿であれ、シャーヒーンから発する気配は穏やかだ。
リーンがそれを素直に受け入れると、言葉がなくてもシャーヒーンの心がますます伝わるようになった。
リーンが立ち上がったとき、視界の端で緑が揺れた。シャーヒーンのほうが先に気づき、リーンの前に立つ。
すると、緑を掻き分け姿を見せたのはスワイドだった。